仕事を辞めれば失業保険がもらえる=間違い

1.仕事を辞めなくても雇用保険は使える

雇用保険というと、仕事を辞めたときに失業保険だけをもらう制度のように考えている人も多いようです。

しかし、それは正しくありません。

仮に仕事を辞める気がなくても、利用できる雇用保険制度はあるのです。

つまり、「会社を辞めないで利用できる雇用保険制度」が存在します。

国からお金をもらってお勉強。
国からお金をもらってお勉強。

その代表的なものが、教育訓練給付です。

これは、資格試験予備校の学費の一部をハローワークが負担してくれる制度です。

要するに、資格試験予備校の受講料が実質的に割引きになります。

何パーセントが割引きになるのかというと、20%となっています。
最高は10万円までです。

しかし、どの資格試験講座であっても、申し込みさえすれば2割に該当する受講料が支給されるわけではありません。

教育訓練給付が支給されるのは、厚生労働大臣が指定した講座に限られます。

また、申し込んだ段階ではなく、しっかり受講・修了していないと教育訓練給付は出ません。

このように、資格講座は限定されていますし、最後までやり遂げた場合でないと給付金が出ることはなく、ハードルは少々高いともいえます。

しかし、自分が希望する資格試験講座が指定されている場合は、この教育訓練給付制度を利用しない手はありません。

在職中でも支給される給付金としては、他にも下記のような制度があります。
・育児休業給付
・介護休業給付
・高年齢雇用継続給付

いずれも、会社を辞めずに申請できて、在職中に支給を受けることが可能な給付金です。

2.仕事を辞めれば失業保険がもらえるわけではない

「退職すれば、誰でも失業保険をもらうことができる」
このように考えている人は少なくありません。

しかし、この認識は大間違いです。

ある程度の期間、フルタイムで働いていたような場合は失業保険がもらえるかどうかを細かく気にする必要はありません。

しかし、パートタイムで働いていたり、就職してから数ヶ月といった短期間で退職する場合、失業保険が支給されないことも少なくないのです。

いざ会社を辞めてハローワークに手続きに行ったら、「あなたには受給資格がありません」と言われた・・・

こうなると、一刻も早く再就職をしなければなりません。
腰を据えて長く続けられる仕事を探すこともできず、結果、またブラック企業につかまってしまう・・・というマイナスのスパイラルに陥ってしまう人も多いのです。

そのような事態に足を踏み入れてしまわないよう、自分が退職後に失業保険をもらえるのかどうかは辞める前にしっかりとチェックしておくべきです。

では、雇用保険に加入していた人が失業保険をもらう条件をざっと見てみましょう。

1.雇用保険に加入し、半年(会社都合退職の場合)あるいは1年(自己都合退職の場合)保険料を納付してきたこと
2.失業の状態であること
3.ハローワークで求職手続きを完了しており、受給資格決定を終えている

これら3つの条件のうち、どれかひとつが欠ければ失業保険をもらえる資格に該当しないことになり、失業保険は支給されません。

次から、上記であげた「失業保険がもらえる3つの条件」について、詳しく見ていきたいと思います。

3.雇用保険に加入できる条件

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退職後、失業保険をもらうには雇用保険に一定期間加入している必要があることは、すでに説明しました。

では、雇用保険には誰でも無条件に加入できるのでしょうか?

いえ、条件はゆるいのですが、雇用保険に加入するのにも一定の条件が定められています。

具体的には、次のような条件を満たしている必要があります。
・1週間あたりの所定労働時間が20時間以上である
・31日以上、継続して雇用される見込みがある

これらの条件を満たしていれば、雇用形態は関係ありません。

正社員、契約社員、パート・アルバイト、派遣社員など、名称が何であれ、雇用保険への加入が認められています。

派遣社員の場合、派遣『元』との雇用契約で判断されますので注意してください。

例えば、ひとつの派遣『先』が2週間で終了したとしても、派遣元との契約は続いていて1ヶ月を超える見込みの場合は、雇用保険に加入することになります。

なお、労働者が雇用保険に「加入する権利がある」ばかりではなく、会社の側としても雇用保険に「加入させる義務がある」ことを忘れてはいけません。

労働法を守る気がない会社だと、よく「契約社員やアルバイトは、雇用保険は加入できないんだよ」という説明をしていますが、完全なデタラメです。

雇用保険法では、アルバイトだろうが契約社員だろうが1人でも労働者を雇った場合は、雇用保険に強制加入することになっているからです。

この「労働者」はあくまで雇われる人を指していますので、役員や自営業の方は除外されます。

また、生命保険や損害保険、証券会社の外務員などで、業務請負外務員の身分で働いている場合も対象外です(雇用契約の場合は加入できます)。

「自分が雇用保険に加入しているかどうか?」
を知る一番簡単な方法は、給与明細を確認することです。

雇用保険料が天引きされていれば、雇用保険に加入しています。

しかし、雇用保険料を天引きしていながら雇用保険料をハローワークに納付していないというケースがごくまれにですが発生していますので、絶対的な判断基準ではありません。

4.まとめ

上司から理不尽に怒られても、乗せられないで。
上司から理不尽に怒られても、乗せられないで。

・仕事を辞めなくても利用できる雇用保険の制度があるので、簡単なスキルアップに利用できる

・仕事を辞めれば無条件で失業保険がもらえる訳ではないので、勢いで会社を辞めてしまうことは絶対に避けたいところ

・雇用保険に加入するには、毎週の労働時間と勤務期間の両方の条件を満たしている必要がある。片一方でも満たしていないと、失業保険をもらえないので注意。

自分が「失業保険をもらえない」状態にあることに気付かないまま辞めると言ってしまい、後から後悔している人は意外に多いです。

会社を辞めたい、と本気で考えるときは会社に対して怒りが爆発しているというケースも少なくないでしょうが、そこは一歩ひいて落ち着くべきです。

感情的になったところで、自分が損してしまうだけですから。