失業保険の最低額・最高額、日数

1.失業保険の最低額・最高額

前回、「失業保険は給料の5割から8割の範囲に収まる」ことをお話しました。

5割から8割というと、「なぜ、そんなに幅があるのか」という印象を持たれる方も少なくないでしょう。

なぜ?
なぜ?

これは、失業保険が、「再就職に集中するために支給する生活補助の手当」だからです。

仮にですが、失業保険の日額が一律「在職中の給与の6割」として支給されたらどうなるでしょうか。

在職中に非常に安い給与で働いていた人だと、もともとギリギリの生活をしていている可能性が高いです。

そのような人の場合、給与の6割を支給されても生活していけません。

逆に、在職中の給与が高かった人の場合、6割を支給されなくても生活は十分に可能です。

このように、失業保険を支給する目的にそうよう、金額に調整がかけられているのです。

では、退職前の給与が毎月300万円だった人は、最低でも毎月150万円の失業手当をもらえるのでしょうか?

残念ながら、そこまでの金額が支給されることはありません。

なぜかというと、失業保険には上限金額と下限金額が設定されているからです。

平成25年度(平成25年8月~平成26年7月)の場合、基本手当日額の上限額は6,405円~7,830円(年齢によって異なります)、下限額は1,848円です。

このように、失業保険の日額には最高額と最低額が設定されています。

最低額にかかる場合は、問題ないでしょう。
しかし、最高額の場合、普通に計算した失業手当の額よりも少ない額を支給されることになります。

この場合、「失業保険は給与の5割~8割」という話だけを聞いて退職後の生活費を計算していると、思わぬ落とし穴に落ちる可能性があります。

 

2.失業保険をもらえる日数

失業保険を1日あたりいくらもらえるかが判ったら、次は何日もらえるのか?を調べておきましょう。

失業保険をもらえる日数は、所定給付日数と呼ばれています。

この所定給付日数は、雇用保険にどのくらい加入していたのか、と退職理由によって大きな差がつけられています。

もらえる額は、退職理由で大きく変わります。
もらえる額は、退職理由で大きく変わります。

簡単にまとめると、
「雇用保険の加入期間が長いほど」
「自己都合退職ではなく、倒産や会社都合退職の場合」
「年齢が高いほど(一部例外あり)」
に、より長く失業保険をもらえる仕組みになっています。

場合分けしてみていきましょう。

●自己都合退職の場合

自己都合退職した場合、失業保険の所定給付日数は雇用保険の加入年数だけで決定されます。
年齢は考慮されません。

雇用保険に加入していた期間(被保険者期間といいます)が10年未満の場合は90日。

10年以上~20年未満で120日。
20年以上で150日です。

●会社都合退職の場合

雇用保険に加入していた期間と年齢のふたつの要素によって所定給付日数が決められます。

90日から330日の間で設定されており、自己都合退職に比べると幅が大きいことがお分かりいただけるでしょう。

もっとも少ない90日の場合、年齢が20代で雇用保険に加入していた期間が5年未満という、両方の条件に該当している場合に適用されます。

一方、45歳~60歳で雇用保険の加入期間が20年以上の場合、330日もの間失業保険を支給してもらうことができます。

これは、自己都合退職の150日と比べると倍以上の給付期間となります。

このように、自己都合退職と会社都合退職の差は、年齢が上にいくほど、雇用保険の被保険者期間が長くなるほど、大きく開いていくことになります。

 

3.失業保険が大きく増えるタイミング

前回、失業保険は「雇用保険の被保険者期間が長いほど」「年齢がいくほど」、長くもらえるようになるとお話しました(会社都合退職の場合)。

今回は、失業保険が大きく増えるタイミングについて見ていきましょう。

今回見ていくのは、失業保険の1日あたりの金額ではなく、何日もらえるのかという所定給付日数の方です。

退職前に、落ち着いて確認しましょう。
退職前に、落ち着いて確認しましょう。

まず、給付日数が一気に増えるラインは、「被保険者期間5年」と、「年齢45歳」です。

具体例をあげて見ていきましょう。

退職時の年齢が30歳の場合、雇用保険の被保険者期間が5年未満だと、会社都合退職となった場合でも失業保険は90日しかもらえません。

一方、雇用保険の被保険者期間が5年を過ぎると180日と、一気に倍の金額がもらえるようになります。

これは、雇用保険の被保険者期間が5年になることで、所定給付日数が大きく増えるラインです。

また、44歳で被保険者期間が1年ちょっとの人が会社を辞めた場合、失業保険の所定給付日数は90日しかありません。

しかし、この人が45歳になってから退職した場合、失業保険の所定給付日数は一気に180日と倍増します。

これは、退職時の年齢が45歳に達することで、所定給付日数が大きく増えるパターンです。

逆に考えると、「雇用保険の加入期間が5年」「年齢が45歳になる」直前で退職してしまうと、大きく損をしてしまうことになります。

なお、今回お話した「失業保険の所定給付日数が大きく増えるタイミング」は、あくまで会社都合退職になった場合の話です。

自己都合退職の場合には該当しませんので、そこは注意してください。

 

4.まとめ

・失業保険の支給額は在職中の給与の5~8割だが、上限額・下限額がそれぞれ決められているため、極端に高額になったり、まったく生活の足しにならないほど少額になったりすることはない。

・失業保険をもらえる日数は、退職理由で大きく変わる。自己都合退職だと最高でも150日だが、会社都合退職の場合、330日になる場合も。

・失業保険をもらえる日数が大きく変わるタイミングがある。この時期が近い場合は、退職時期を遅らせるのもひとつの手段。