労働条件は必ず確認

1.労働条件は必ず確認

面接の場で、労働条件を細かく聞きすぎると内定に至らない、という会社は残念ながらまだまだ多いのが実情です。

面接官の圧力は強いが・・・
面接官の圧力は強いが・・・

このため、面接の場でも熱意を示すために心にもないことをアピールす人が後を絶ちません。

例えば、
「給料はいくらでも結構です。残業は好きなだけ命じて下さい。毎日終電でも大丈夫です。休日出勤も苦になりません」
といった具合です。

しかし、本当にこのような条件で働くとしたら、そのような過酷な仕事は長期間続けることはできません。

遅かれ早かれ、体や心を壊して退職する事態に追い込まれてしまいます。

労働者を使い捨てすることを前提に採用する企業も多いですから、このような姿勢は短期の職歴を重ねることにつながってしまいます。

再転職活動は厳しいものですが、だからといってブラック企業に捕まってしまえば別の苦しみが待っています。

安易な熱意アピールは避けなければなりません。

ブラック企業に捕まることを避けるには、入社前に労働条件を確認しなければなりません。

いくら熱意をアピールしていても、本当のところは誰でも自分がいくらもらえるのか?休みはいつなのか?年間何日なのか?残業は月何時間くらいなのか?は気になるはずです。

「面接の場で休日を質問するような応募者は落とす」という見解の採用担当者も多いですが、逆にそういった採用担当者がいる企業は勤めても心身が摩耗するだけの可能性が高いです。

確かに、いきなり休日は?給料は?などと聞くのは印象が悪いですから、労働条件の概要について教えて欲しいと切り出すのが無難でしょう。

そもそも、会社は労働条件を明示することが労働基準法で義務づけられています。
本来は、要求がなくても説明するのが当然なのです。

その労働条件すら開示したがらない会社というのは、そもそも法律を守る気がない会社です。

入社してからでは取り返しがつかないことですから、遠回しにでも必ず確認しておきましょう。

 

2.会社の労働条件明示義務

前回、会社は労働条件を採用する相手に明示する義務があると書きました。

では、どのような労働条件が「明示する義務がある」のでしょうか?

労働条件は機密事項ではありません。
労働条件は機密事項ではありません。

具体的には、下記の項目です。

これら5つの労働条件は、労働基準法第15条で定められていますので、会社は必ず採用する人に明示しなければなりません。

守らなければ、労働基準法違反です。

1.働く場所と、仕事の内容

最初に仕事をする場所と、何の仕事を行うかについて伝えます。

2.仕事を開始する時刻と、終了する時刻、残業がある場合はその旨。休憩時間と休日

労働時間についても、明示する義務があります。
この場合、単に週○○時間といった書き方では不足です。

何時スタート、何時終了、休憩時間は何時から何時まで、休日はいつ、シフト制の場合は交代方法など、労働時間について具体的な説明が必要です。

3.給与の額、計算方法、締め日と支払日

給与についても、月○○万円といった表記だけでは不十分です。

賃金の計算根拠(給与○○万円中、家族手当2万等)や、給与の締め日、給与の支払日など具体的に、「いつ、いくらもらえるのか?その給与は、いつからいつまでの労働分の対価なのか?」が分かる書き方でないといけません。

4.退職について

退職の条件です。自己都合退職、解雇、定年、契約期間満了による退職等、契約の終了として想定される条件について説明する必要があります。

5.契約期間

これは、有期労働契約の場合のみ明示が必要です。

簡単にいえば、何月何日までの契約で、更新の可能性があるのか?ないのか?を明示する項目です。

正社員としての採用の場合、「期限の定めのない契約」となりますから、契約の終了時期を明示する必要はありません。

これら5つの項目については必ず説明する義務がありますし、書面で手渡す必要があります。

労働基準法で決められていますので、「当社はそういった書面は発行していません」というやり方は通用しません。

そういったことを平気で口走る会社はおおよそ法律を守る気がありませんので、危険なシグナルです。

 

3.会社の労働条件明示義務2

上で、「採用にあたって会社が応募者に明示する労働条件」について説明しました。

すでに説明した仕事内容や給与、休日といった項目は、労働基準法で会社に明示が義務づけられている項目でした。

つまり、どのような会社であっても、前回説明した5項目に関しては説明がなければおかしいことになります。

さて、労働条件には、それ以外に、会社が定めている場合のみ明示する義務がある項目があります。

調子よくごまかされないようにしよう
調子よくごまかされないようにしよう

具体的には、下記の8項目です。

1.退職金が支給される労働者の範囲、金額の計算方法、支払い方法、支払いの時期

退職金制度がある場合のみ、もらえる社員の範囲と支払い条件を明示する必要があります。

2.臨時の賃金、賞与、その他の手当

臨時の賃金というと難しそうですが、要するにボーナスや、臨時手当といった、毎月必ずもらえるわけではない性質の給与を指します。

こういった賞与が手当がある場合のみ、額や計算方法、支払い対象や支払時期を明示する必要があります。

3.作業道具、作業服代などの労働者の負担の有無、金額など

仕事に必要な道具類、作業服代などの負担条件です。

4.労働安全・衛生

5.表彰・懲戒の種類・程度
表彰や懲戒処分を受ける条件について明示します。

6.教育研修、職業訓練

社内で研修や職業訓練を実施する可能性がある場合は明示します。

7.業務上の災害補償、業務外の傷病扶助

8.休職

休職制度があれば明示します。

これら8項目については、前回説明した必須5項目とは異なり、書面での明示が会社に義務づけられているわけではありません。

つまり、口頭での説明であっても問題はありません。

しかし、こういった多数の項目について一気に説明されたところで、内容を覚えていられる人などいません。

このため、できる限り文書の形で受け取ることを要求した方が無難です。

これら会社が明示した労働条件に応募者が合意すれば、晴れて合意が成立し、労働契約が成立します。

4.まとめ

・ブラック企業に入るのを避けるために、入社前の労働条件の確認は必須。

・会社に明示義務がある労働条件は、法律で定められている項目と任意の項目がある。

・任意の項目といっても「明示しなくていい」という意味ではなく、「その項目について会社が規程している場合のみ明示する」という意味なので、会社に言いくるめられないように注意する。