懲戒解雇でも、退職金とボーナスはもらえるのか?

1.法律上、退職金を支払う義務は会社にはない

会社を退職した後、当面の生活費に退職金を当てにしている人も多いと思います。

しかし、会社には退職金を支払う義務はありません。

退職金がもらえないとクビが回らない・・・
退職金がもらえないとクビが回らない・・・

実は、退職金については支払いを強制する法律がなく、払う・払わないは会社の自由なのです。

といっても、会社が「今、経営苦しいから、悪いけど退職金はなしにしてください」と勝手に決めることはできません。

就業規則や雇用契約書に、退職金を支払うと明文化してあれば、会社はそれに従い、退職金を支払う義務を負っています。

それを無視して退職金の支払いを拒むと、法律違反です。

では、退職金の支払いについて何も定めていない場合、退職金はいっさい期待できないのでしょうか?

この場合は、職場の慣例に左右されます。

退職者に、名目は何であれ金銭を渡していた場合は、今から退職する社員も、そのお金を同様にもらう権利が認められるのです。

さて、退職金がもらえる・もらえないの判断は以上でついたと思います。

しかし、今後は別の問題が発生します。

「自分の退職金がいくらか」を全く確認しないまま退職してしまう人が多いのです。

いざ退職金が振り込まれてから、自分が期待していた金額よりずっと少なかった場合、退職後の生活プランが成り立たなくなります。

収入がなくなるというのに、このような行き当たりばったりで行動すると泣きを見ることになります。

退職金の金額は、就業規則の退職金規程に明記されていますから、必ず退職前に確認するようにしましょう。

2.懲戒解雇=退職金はもらえない?

懲戒解雇されてしまった場合。

懲戒解雇そのものは仕方ないにしても、会社から「退職金を支払わない」と告げられる事例が増えています。

懲戒解雇に至るほどの迷惑をかけたのだから、退職金をもらおうなどずうずうしい、といった会社の言い分は、一見正しそうに思えます。

まず、大原則として「会社がその時に勝手に判断して退職金を取り上げる、あるいは減額することは認められていない」ことを理解してください。

退職金規程で、あらかじめ「懲戒解雇の場合は退職金を出さない、あるいは減額する」と定められていない限り退職金の不支給・減額は違法になります。

また、退職金規程に退職金不支給・減額の規程があっても、その懲戒理由が「今まで会社に貢献してきた功績が消え去ってしまうほど(退職金不支給)、あるいは著しく減ってしまうほど(減額)」の信義則違反があった場合に限り認められます。

上記は裁判所が出した判断ですが、一般的な感覚では、「懲戒解雇されるほど悪いことをしたのだから、退職金がなくなっても文句はいえないのでは?」と感じる人も多いのではないかと思います。

しかし、退職金というのは、今まで会社に貢献してきたことに対する、後払い給与という側面があります。

給与の一部をプールしておき、退職時にまとめて支払う、というイメージです。

給与である以上、簡単に取り上げるのは問題があります。

このため、会社のお金を横領するなど、会社に損害を与えて著しい信義則違反を発生させたような場合を除き、例え懲戒解雇であっても退職金をもらう権利はあると考えられています。

あいまいな書き方になってしまうのは、「懲戒解雇に至った理由」イコール「退職金不支給・減額の理由」ではないからです。

ただひとついえるのは、懲戒解雇になったからといって、即、退職金の不支給に至ることはない、ということです。

会社は退職社員に金銭を支払うことを極端に嫌がりますから、言いなりになると不利益を一方的に押しつけられてしまいます。


 

懲戒解雇になった場合、失業保険すら出ないと思い込んでいる方がたまにおられます。

もちろん、これも大間違いです。

詳しくは、過去の記事

懲戒解雇は、失業保険がもらえない?

を参照されてください。


 

俺は自由だ!!
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3.辞める社員でもボーナスもらえる?

退職する日程の前後に、ボーナスの支給日が重なった場合。

できれば、ボーナスをもらってから辞めたいと考えるのは当然のことです。

ちなみに、ボーナスは会社が必ず支払う義務がある性質のお金ではありません。

就業規則に規程があって、初めて会社にボーナスを支払う義務が発生します。
逆にいうと、就業規則に定めがない限りは、会社にはボーナスを支払う義務はありません。

一度、就業規則を確認してみてください。
「賞与は、毎年6月および、12月の2回、支給日に在籍する者に対して支給する」
といった支給要件が明記してあれば、その支給日まで会社に在籍していればボーナスをもらう権利があります。

しかし、会社は辞める社員にはできる限りお金を支払いたくないと考えています。

結果として、ボーナス支給日直前に辞めさせるなど、無茶をする会社が多いのです。
当然ですが、こういった「ボーナスを支払わないための無理矢理な退職日設定」は違法になる可能性が高いです。

さて、自分の意思で会社を辞める、いわゆる自己都合退職の場合、ボーナスをもらってから辞めることを伝えましょう。

なぜなら、ボーナスの支払いはしても、評定を操作して支払いを最低額に調整てくるような手口は相変わらず横行しているからです。

具体的には、実際の評定がAランクでも、「どうせ辞める社員だから」と、Dランクにして、ボーナスの額をごっそりと減らすなどの操作を行います。

この場合、違法だと主張してもその言い分が認められることはまずありません。

会社がその社員をどう評価するかは、あくまで会社の裁量に任されていますから、そこまで法律が介入することは不可能なのです。

在籍さえしていればボーナスはもらえるから安心、と考えて有休消化をあてていると、こういった思わぬ減額処分の直撃をくらう可能性があります。

自分で退職日を選べる場合は、やはり「ボーナスをもらってから辞める」だけではなく、「ボーナスをもらってから、辞めることを伝える」方が安全といえます。

4.解雇でもボーナスもらえる?

前回は、退職時のボーナスについてお話しました。

会社は、退職者には1円でもお金を渡したくないというのが本音です。

なので、ボーナスをもらってから辞めるのではなく、ボーナスをもらってから「辞めることを伝える」のが、金額をごっそり減らされない秘訣です。

ここまでは、退職時期を自分でコントロールできる、自己都合退職のお話です。

では、退職時期を会社から突然指定される、解雇の場合はどうなるのでしょうか。

解雇日が19日で、ボーナスの支給日が20日だった場合、ボーナスを1円ももらえなくても文句が言えないのでしょうか?

会社が、「ボーナスを支払いたくないから」といって解雇するのであれば、それは不当解雇に該当する可能性が高いです。

よって、このような露骨な「ボーナス支払い回避目的」の解雇をされても泣き寝入りする必要はありません。

また解雇の場合、就業規則で定められたボーナスの支給日に在籍していなくても、ボーナスを支給してもらう権利があると、裁判所が出した判例で示された例があります。

ボーナスというのは、算定期間の給与を後払いするという側面もありますので、その分を会社側が一方的に支給しないことを決定するのは横暴という判断なのかも知れません。

この点、支給日に在籍していないとボーナスをもらえなくても文句が言えない自己都合退職のケースとは取り扱いが異なる点です。

解雇は、退職日を自分で選ぶことができませんから、その分社員側が不利です。
そのため、裁判所はそこまでの横暴を認めていません。

これを許すと、リストラをする場合、退職日を「ボーナス支給日直前」に設定するような会社が世の中にあふれかえることは容易に想像がつくからです。

こんな所で仕事か・・・
こんな所で仕事か・・・

5.まとめ

・退職金は、必ず出るとは限らない。要確認!

・懲戒解雇になっても、「即、退職金を支給しない」という結論は不当。

・辞めた後に支給日が来るボーナスは、もらえないと考えるべき。

・ボーナス支給日が近くに解雇された場合、ボーナスが出る可能性が高い。これは、解雇は退職日を自分で決めることができなことが主な理由。退職日を自分で設定できる自己都合退職の場合と区別する。