請負契約の落とし穴 失業保険.comメルマガ

■ 第64回 請負契約の落とし穴

9月に、

「厚生労働省がバイク便業者に指導を行った」

という報道がされました。

 

配達員と

「個人請負契約」

を結んでいる業者が多いが、

労働実態にそぐわない、

というのがその理由です。

バイク便 業務委託
バイク便=業務委託契約は拒否されました。

以下に、9月28日付の

産経新聞の記事を引用します。


<ここから>

個人請負は仕事の進め方を

自分の裁量で決められる半面、

「労働者」とみなされないため、

事故に遭っても労災保険が適用されない。

 

厚労省はバイク便スタッフが

会社の指示を受け、

労働時間を管理されるなど

通常の労働者と

同様の働き方をしていることから、

個人請負での契約には適さないと判断した。

<ここまで>


 

「バイク便」業界なんて関係ないから・・・

と考えると、会社の思うツボです。

 

この記事はバイク便業界の人だけでなく、

請負契約で働く人全てに関係があります。

 

記事の内容を、

分かりやすく言い直してみます。

 

「会社の指示に従う義務がある

(拒否できない)」

業務委託なのに仕事手順ががんじがらめ
業務委託なのに仕事手順ががんじがらめ

「労働時間を管理されている

(自分で仕事の段取りを決める自由はない)」

場合は、「請負契約とは認めませんよ」

と厚生労働省がいっているのです。

 

つまり、

「こういう場合は雇用契約にして、

きちんと保険にも加入させなさい」

ということです。

 

ご存知かも知れませんが、

請負契約だと会社は保険料の負担がありません。

 

雇用契約ではありませんから、

気に入らなければ解雇しても

何の責任も問われません。

(そもそも請負契約に解雇はありませんが)

 

こういう都合のよさが、

いわゆる「偽装請負」が横行している

背景でもあります。

 

最近は一般事務職でも

請負契約で働く人が増えてきており、

中には偽装請負状態の人も、

多く含まれていると考えられます。

 

請負契約で働いている方は、

自分の労働形態が果たして

「請負」と呼べる状態なのか?

 

一度確認されておいたほうが

いいかも知れません。


関連記事:

労働法が適用されない人たち

日雇い労働=保険なし・・・?? 


■ 編集後記

偽装請負状態でも、

「文句を言えば仕事を干される」

から黙って働くしかない、

と考える人も多いでしょう。

 

しかし、上記バイク便業界の件は、

業界の一部労働組合が

厚生労働省に働きかけた結果です。

 

黙っていれば企業は、

不利な条件で働かせ続けます。

 

ろくでもない会社からは逃げるか、

改善を求めるかの二択です。

 

2.某全国チェーン牛丼店の手口

 

「生活費が足りないから、

アルバイトをしよう」

そんな気軽な気持ちで始めたアルバイトが、

実は業務委託契約。

アルバイトのはずが、業務委託契約
アルバイトのはずが、業務委託契約・・・

業務委託だからといって、

残業代も支払われずに

1日16時間働かされ、

休みは月2日しか

認められなかった・・・

 

このような信じられない事件が、

全国に店舗展開する、

某牛丼チェーン店で

横行していました。

 

この牛丼チェーン店は、

「アルバイト募集」

で入社してきた

アルバイトの人に対し、

想像を絶する

過酷な労働内容、

1日16時間といった

度を超した長時間労働、

週に一度も休みを与えない、

など、信じられないような

環境で仕事を強いていました。

 

会社の上層部は、

「店を回す人数が少なければ、

人件費が抑えられるから利益が出る」

と考え、このようなムチャ振りが

日常化していたそうです。

 

しかも、

ここまで長時間労働をさせておいて、

残業代は全くか、ほとんど

支払われていなかったと

報道されています。

 

さすがに我慢の限界が来たのか、

多くのアルバイトが

「残業代」

を求めて訴訟を起こしました。

 

そこで会社の反論が、

「業務委託契約だから、

そもそも残業代の支払い義務がない」

でした。

 

その牛丼店では、

仕事の様子を店内カメラで監視され、

仕事が遅いと叱責される、

というがんじがらめ状態で

従業員が働いていました。

 

牛丼をよそうのが遅いと、

容赦なく怒鳴られていた、

という証言が多くのアルバイトから

あがっています。

 

さて、このような状態で、

「業務委託契約だから、

残業代はない」

という理屈は通用するでしょうか?

 

ご想像いただけるかと思いますが、

裁判所は会社の言い分を退け、

未払い残業代の支払いを

命じました。

 

会社が展開する、

妙な理屈に黙っていれば、

このようなことが明るみに出る

こともなかったでしょう。

 

上司に刃向かう、

というのはなかなか勇気がいることですが、

あまりにおかしな体質の会社で

「我慢し続ける」

と、壊れるのは自分の方です。